ポリオとの闘いは長く、古代エジプトの壁画にも描かれている。ウイルスで人から人へ感染するポリオは、発症すると10人に1人が亡くなり、2~3人の手や足、肺に障害(麻痺)が残る。小児の発症が多いことから「小児麻痺」と呼ばれたこともある。発症しないケースも多いが、いまだに有効な治療方法がなく、完治は不可能とされている。
19世紀後半から20世紀にかけてポリオの感染は拡大し、第2次大戦後は世界中で大問題となった。1909年にポリオウイルスが発見されたが、麻痺を改善する特効薬や技術はない。1920年ごろ、オーストラリアの看護婦エリザベス・ケニーが、手足をギプスや副木で固定するよりも、体を動かし筋力トレーニングをするほうが麻痺の改善になることに気づき、新しい技術を開発した。ケニーは財団を創設し、オーストラリア(1933)、イギリス(1937)、そしてアメリカのミネアポリス(1940)に診療所を開設、その技術を世界に普及させた。
1950年代になって2人の研究者により相次いで2種類のワクチンが開発され実用化された。ポリオはワクチンによる予防が可能な病気となったのである。こうして根絶にむけて「ワクチン投与」が世界的な課題になった。
WHO、UNICEF、各国政府や国際ロータリーをはじめとするNGOの取り組みにより、2016年10月末現在、ポリオが常在する国は3か国(ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタン)のみとなった。しかし今後の発症を防ぐため、根絶した地域でもワクチン投与の継続は必須である。内戦や貧困などで流行再燃の不安を抱える地域がかなりある。今なおポリオの根絶は実現していない。ポリオとの闘いの歴史をまとめてみた。