先日ある方のコラムに「1961年東京オリンピックの記念たばこ(ピース)」のことが載っていた。私も何枚か持っているぞとコレクションBOXを開けてみたら、鉄道関連の記念たばこの空き箱が出てきた。1960年代から1970年代にかけてのものが中心で、まだたばこが普通にある時代だった。私はたばこ嫌いだったが、空き箱は伝手(つて)を頼って入手していた。
一番古いのは忘れもしない鉄道90周年記念大博覧会(1962年6月15日~7月10日)の記念たばこ①だ。高校1年生だった私は父のカメラ(ミノルタSR3)を持って6月17日に晴海の会場へ出かけた。C51180が展示されていた。そろそろ大正の名機C51が消えようかという時だった。実際は1965年ごろまでC51は存在したが、関東では見ることができず、この180号機も新津機関区の所属で磐越西線を走っていた。博覧会後の夏休み、私はC51を追って新津機関区を訪ねた。博覧会場で特に印象に残っているのは当時最高速度記録を持っていた試験電車クモヤ93000や、閑散線区の末端で線路上と道路上を切り替えて走行可能な試験車両(道路鉄道兼用バス)だ。会場で配布されたB4判両面刷りのチラシ(少々ボロボロだがまだ持っている)によれば、ほかにC62,D51,EF55,EF60,DD13,DF50,マロテ491,カニ22,活魚車(活魚を運ぶ貨車)、除雪車各種、交直両用電車、そして有名な「義経号」などが展示されていた。いずれも見学してきた記憶がある。新幹線車両は試験車両がちょうど竣工するころで模型での展示だった。乗車券の印刷デモンストレーションもあり、でき立ての模擬切符②を入手した。あとで友人に見せたところ「ナンバーが1234だ」と大騒ぎになったが、何のことはない、すべてが1234だった。
この年の鉄道記念日(現在の鉄道の日、10月14日)には鉄道開業90周年記念たばこ③が発売された。1号機関車と東海道新幹線が描かれている。
その2年後(1964年10月1日)には東海道新幹線開通記念たばこ④が発売された。なかなか良いデザインで私は気に入っている。
ここまではいずれも銘柄は「ピース」だった。
1972年は春に東海道新幹線の岡山延伸。秋には鉄道100周年で記念たばこが発売された。銘柄はピースではなくチェリーだった。たばこのことはよくわからないが、その当時はチェリーが人気だったのだろう。山陽新幹線新大阪~岡山間開通記念⑤はしわだらけになってしまったが、知人が捨てようとしていたのをもらい受けたものだ。3月15日が開業日だった。同じ年の秋、10月14日の鉄道記念日には鉄道開通100年記念⑥が発売され図柄は開業当初の1号機関車で、銘柄はやはりチェリーだった。このパッケージから健康のため吸いすぎに注意しましょうという文字が印刷されている。
その3年後には山陽新幹線が博多まで延伸された。新幹線岡山・博多間開業記念⑦を見ておわかりのように、電車は1964年から変わらず「01系」の時代だった。これも銘柄はチェリーでピースの出番はもうなかった。
記念たばこは国鉄以外でもあった。翌1976年には横浜市高速鉄道横浜~上永谷間開通記念⑧が同じくチェリーで発売されている。
その後、鉄道関連の記念たばこをあまり見かけなくなった。嫌煙運動が盛んになり、禁煙車両が当たり前になってきたからであろうか。