• MY HOBBIES / Kenichi Hamana

1930年5月10日から3日間、神戸市で第2回第70区年次大会が開催されました。東京ロータリークラブ(RC)の創立から10年、日本国内には7つのRCがあり、国際ロータリー(RI)第70区を構成していました。この大会の第2日に近海郵船の吉野丸という客船を貸し切りにして、神戸港を出帆、瀬戸内遊覧をして船上から神戸を眺め、500名余の参加者は家族ともども親睦を深めたと、地区大会記録誌にあります。必要な一部の会議は船上で行ったともあります。初日に地区大会としての大半の会議を終え、2日目は親睦に充てられたものと思います。
私がこの大会を知ったのは、ロータリーの切手を集め始めて間もないころ、バイブルのように参考にしていたロータリー郵趣のハンドブックの第2巻に①の記載を発見したからです。
このハンドブックはROTARY ON STAMPS(ROS)が編集し、ATA(American Topical Association)が発行していたもので、1955年にロータリー50周年の記念切手が発行されたのを受けて刊行され、第4巻まで出た後、1992年からはROSのエンサイクロペディアとしてROSがRichard Dickson元会長の献身的努力によって引き継いでいるものです。
この画像を初めて見た時、私は郵便の消印ではないからとあまり重視していませんでした。しかし船上で地区大会が行われた記念スタンプと考えると、当時は船上での会議が認められたのだろうか、と疑問が生じました。そこでさまざまな資料からこの大会の記録誌にたどり着き、上記のような次第が判明したのです。
そうなると、このスタンプの押されたものはないかと気になりだしたちょうどその頃、オーストラリアの銀行家でROSの古くからの会員ケランさんが亡くなられ、その遺品の中に記念スタンプが押された吉野丸の絵ハガキがある、との知らせがありました。二つ返事で入手したのが②です。確かに同じ記念スタンプが押してあります。
吉野丸は元ドイツの客船「クライスト」で、平時にはドイツから香港・上海・神戸・横浜への極東航路に使われていました。第一次大戦の結果、戦時賠償として日本に譲渡された6隻の内の1隻で、日本郵船に政府から運行委託(後に有償貸与)され、欧州航路や豪州航路に就航しました。後に、日本郵船近海部(1923年に近海郵船)の所属となり、台湾航路(基隆~門司~神戸)に就航していました。ロータリー第70区が借り上げたのはちょうどその頃で、記念スタンプのある絵葉書には「近海郵船」の文字があります。
②のハガキの宛名面には1銭5厘の切手が貼ってあるだけで何も書かれていません③でした。こうなると次はこの記念スタンプが押された絵葉書で実際に使われたものを見たくなりました。10年以上経った今年の夏、なんとヤフオクに出品されているではありませんか④⑤。基隆~門司の船内郵便の消印が押され、発信人は「吉野丸事務長」となっています。地区大会の際に船上から発送されたものではなく、1か月ほど後に、多分残っていた記念スタンプ付きのハガキを吉野丸の事務長が礼状に使ったものと思います。絵葉書の図柄は何種類かあったのでしょう。


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