ロータリークラブ(RC)は一般に「世界的な奉仕団体」として知られています。しかし最初から奉仕を目指したわけではありませんでした。そもそもロータリーは倫理団体だという方も少なくありません。
そのことはさておき、「ロータリーの切手」という面から見ると、ロータリーの奉仕が切手のデザインに登場するのは1980年のロータリー75周年頃ということになります。1955年のロータリー50周年の時には27か国で記念切手が発行されロータリーを広報しましたが、どれにも奉仕は描かれませんでした。
しかしそれ以前、ロータリーはいくつかの奉仕活動を郵便物に残しました。1920~30年代に普及し始めた航空郵便事業の支援、鉄道敷設の支援、スーパーマーケットの開設の支援(町の発展に貢献)などですが、特に航空郵便の広がりには、搭載する郵便物(主に記念封筒=イベントカバー)に特別なスタンプを押すなどして資金集めによる貢献をしたようです。
- 1930年5月27日に米国バーモント州のホワイトリバージャンクションでRCがニューイングランドエアツアーの到着を記念して作成したイベントカバーで、そこで搭載されたこの手紙はニューヨークまで送られました。「Special Delivery」の表示がありますから、普通には航空郵便路線はまだ無かったものと思います。
- その裏面に二つの消印があります。よく見ると、ニューヨークのグランドセントラル郵便局(ステーション)に5月27日の午後10時に着き、さらにタイムズスクエア局に同日午後11時半に着いたことがわかります。①にある消印は同日午前10時半ですから、当時としては画期的に早く届いた、まさに特別配達だったのです。
- 1938年5月15日から21日まで、イリノイ州ウイルミントンで開催された全国航空郵便週間を記念したイベントカバーです。左下方にSponsored by the Rotary Club of Wilmington(ウイルミントンRC後援)の文字が見られ、ロータリークラブが資金などを提供したことがわかります。宛先にもちょっと興味が湧いてきます。
- 1938年11月11日にオーストラリアのトゥーラウィーナーからシドニーへの航空郵便開始を記念したイベントカバーで、地元RCが肢体不自由児のための基金への募金を兼ねて作成したものです。250通限定のカバーには機長のサインがあり、この手紙を出した人は郵便料金のほかにいくらかの寄付をしたものと思われます。
これらはほんの一例で、特に米国では数多くのイベントカバーが残されています。
初期の航空郵便は事故が多く、それだけに郵便飛行士は危険を伴う人気の職業でもあったようです。郵便飛行士だったサン・テグジュペリは1935年のリビア砂漠での郵便飛行機墜落事故の体験をもとに「星の王子様」を書いたというのは有名な話です。まだまだ不安定だった航空郵便を定着させるため、当時のRCは郵便飛行イベントを後援したものと思います。