今月も引き続きフランス印刷の「ロータリー50周年」の3番目としてモナコを紹介しようと思います。
モナコのロータリークラブ(RC)は1937年、近隣のニース(フランス)で国際ロータリー(RI)の年次大会が開催されたときに発足しました
RIは50周年に先立って、各国のロータリーに切手の印刷見本を添えて、それぞれの郵政当局に50周年記念切手の発行要請をするよう依頼しました。その中に地球をモチーフにした図案がありましたが、モナコの切手はその地球をデザインの核に据えています。
① は1955年6月7日に229,000枚発行された切手の田型です。デザイナーはB. Minne氏で、その最終原画②をよく見ると、「SEAVICE AVOBE SELF」となるべき箇所(赤矢印)が「AVOBE」ではなく「NOT」になっています。「SEAVICE NOT SELF」は50周年よりはるか以前のモットーでしたが、デザイナーはそれを知っていたのでしょうか。これは製版(凹版)段階で彫刻師Fenneteaux氏により修正され、第1ステージのプルーフ③では正しく「AVOBE」になっています。また額面が15Fから30Fに変更されていますが、これは国際郵便用の額面にしたことによる変更とされています。
プルーフは多数残されていますが、2色刷りの一例④や薄紙に刷られたプルーフ⑤を紹介しておきます。彫刻師のサインがないものもあり、単色も含め、モナコはプルーフのバリエーションが、同じフランス印刷のチュニジアやモロッコに比べて多いのが特徴です。カラートライアルも先月ご紹介したフランスに負けず劣らず、かなり作られました。横5×縦6の30面シートの最下段の5枚を2種⑥だけ掲載します。右下部に印刷日が記されていて資料として参考になります。
フランスはじめ他の国では発見されていないのですが、モナコではこのカラートライアルを切り離して切手として貼ったFDC(初日カバー)が作られました⑦。消印が一般的なものではなく郵便博物館の消印なので、記念品としてごく少数作られたものと思われます。FDCやマキシマムカードは世界共通の図案のものが20種類ほどありますが、2種類だけモナコ独自の図案(カシエ)のFDCを入手しましたのでご紹介します。⑧はカシエの下部に「MONACO」の文字が大きく入り落ち着いた色調で、英国あてに実際に使われたものです。最後に⑨はMONACOのほかMONTE CARLOや CASINOの文字があり、繁栄するモナコを表しているのだと感じさせます。
こうしてフランス印刷のプルーフやカラートライアルなどを整理してみますと、切手だけ集めていればよいものを、きりがないものに手を出していたようで、完璧な整理は難しいことが、今になってよくわかります。