50周年記念切手の第5回は「フランス」です。
フランスで印刷されたロータリー50周年の記念切手は、前回ご紹介したザールのほかモロッコ、仏領西アフリカ、チュニジア、モナコがありますが、国際ロータリー公式50周年の1955年2月23日に発行されたのはこのフランス本国のみでした。さすがに同時に数か国の切手を発行することはできなかったのでしょう。
まず、デザインの原画をご紹介しましょう。①は最終案のひとつですが、農耕の動力が「馬」になっています。決定図案②ではそこが「トラクター」になりました。馬ではなく牛の図案もあり、いろいろ検討されたものと思います。初期段階では、数人のデザイナーがいくつものエッセイを残しています。決定図案②をよく見ると下部の国名の「F」が「E」と誤記されていて、凹版の彫刻段階で修正されています。このデザインはラウォル・セレス氏によるもので、よく見ると切手の左下方にご本人の名前が彫り込まれています。
切手の製作段階では1st stage ダイプルーフ③から2nd stage ダイプルーフ④、その2色刷り⑤が試刷され、通常のダイプルーフ⑥⑦では多くの色で数十枚が試作されます。ほんの一部しかご紹介できませんが、ピンクや淡いブルーなど、集めだしたらきりがない世界です。ダイプルーフには薄めの用紙で作られたもの⑧や、小型のダイを使って作られたもの⑨などもあります。
この切手は、1955年2月23日に300万枚が発行されました。シートは縦に10枚(段)、横に5枚(列)の50面シートです。ダイプルーフで切手のデザイン確認が済むと、実際のシートに印刷して「色決め」が行われます。その際に試刷されるのがカラートライアルプルーフです。4種のカラートライアルのフルシートを入手しましたが、大きすぎてコレクションには不適で、実際は左下部5枚⑩や右下部5枚⑪の形で集めるのがよいとされています。いずれも下から5段目より上の6枚は5段目と同色で、横列5枚は段ごとに同じ色なので、これで十分な気がします。左下には印刷された日、右側には色番号が記入されていて、資料としても十分な価値があります。
⑫は発行された切手の左上コーナーの田型ですが、無目打ちの切手も10シート作られました。デラックスシート⑬も少数が発売されました。
デザインしたセレスさんのサインはダイプルーフなどにありますが、発行された切手をロータリーのエンブレムのシールと一緒に台紙に貼り、そこにセレス氏がサインしたもの⑭があります。素性は不明ですが、ロータリーの記念集会に招かれたセレス氏が求めに応じてサインしたものと考えます。⑮~⑰は発行日の記念カードや初日カバー(FDC)で初日の記念消印が押されています。
この切手は不採用デザインにもダイプルーフが残されていて、⑱はチャールス・パウロ デュフレスネ氏がデザインしたもので、カラートライアルなども多数存在します。ほかにも郵政のデザイナーではないのですがマーシャル・デュポン氏作のものもありますが、長くなりますのでこの辺で。