• MY HOBBIES / Kenichi Hamana

私は最近になって、四国の北川村(高知県)に「モネの庭マルモッタン」があって、その近くを走る土佐くろしお鉄道がそこと提携し、ディーゼルカー9645(2002年製の9640型の1両)を丸ごとラッピングして「モネ号」として2003年から走らせていることを知った。現在もラッピングは続いているようだ。「モネの庭」といえばフランス、パリ郊外の「睡蓮」で有名なジベルニーの庭のことで、私も1999年の7月に訪ねたことがある。北川村のそれがどうなっているのかは一度訪ねてみねばなるまい。
そういえば、モネの作品には鉄道を描いたものがある。①「サン・ラザール駅」、あの有名な汽車のいる風景である。クロード・モネ(1840~1926)は印象派を代表するフランスの画家で「睡蓮」シリーズなど有名な作品が多い。この「サン・ラザール駅」は1877年の作品で、まだ有名ではなかったモネが、大画家のふりをして駅長をうまく丸め込み、汽車を停め、ホームにいる人を退去させ、機関車には石炭を目いっぱいくべて煙を吐かせた、という逸話(友人の画家ルノアール談)が残っている。そうでなければこの構図での絵は無理だっただろう。元・鉄道駅を転用したオルセー美術館で観た時の印象は今も瞼に焼き付いている。今、私が駅でこの構図で写真を撮ろうとすれば即逮捕、となるようだ。モネはこの時期、駅の近くに住み汽車や駅を描き12点の作品を残している。

印象派の汽車といえば、もう一枚忘れられない絵がある。オランダのポスト印象派の画家ヴィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)の「雨上がりのオーヴェルの風景(背景に馬車と列車のある風景)」②である。ゴッホは「ひまわり」が有名だが風景画も多く残している。この作品は死の前月1890年6月に描かれたもの。場所はゴッホの村とも言われるオーヴェル・シュル・オワーズ(パリ近郊)で、死の前約60日の滞在中にゴッホはかなりの数の風景画を描いた。名作も多い。汽車は煙をたなびかせて遠くを走っているが、その手前の道路の馬車の雰囲気はまさに「雨上がり」である。私はこの絵を所蔵するプーシキン美術館に行ったことがなく、東京・新宿で観た。1993~97年に安田火災美術館(現・SONPO美術館)がゴッホの作品展を毎年開催したが、確かその3回目1995年の展覧会に展示され、感銘を受けた記憶がある。

印象派の鉄道絵画にはほかにも、クロード・モネの「雪の中の汽車」やサン・ラザール駅シリーズの「列車の到着」、エドゥアール・マネ(1832~1883)の「鉄道」、カミーユ・ピサロ(1830~1903)の「ポントワーズ、バディの風景」などがある。印象派の時代、鉄道は文明の象徴であった。今回は私が特に好きな2点を紹介した次第。


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