• MY HOBBIES / Kenichi Hamana

いつ頃だったかロータリー関係の古い郵便物(封筒やはがき)の束を入手したことがありました。そのままにしていた一束をほどいて、ああこれは○○と、想像しながら確認作業を進めました。いずれも1930年代後半のものです。一枚、目を引く封筒が出てきました。ロータリーのエンブレムの下にMARIANSKE LAZNEと、その下にドイツ語でMARIENBADと書かれてありました。「え? あのマリエンバード?」とびっくりしました。

私と同年代以上で映画好きな方なら「去年マリエンバードで」という映画をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。1961年制作、日本公開は1964年というこの映画は黒澤明監督の「羅生門」がモチーフになっているといわれ、「昨年」の5日間の出来事と「現在」の7日間の出来事を描いたものであり、430のシーンで構成され、「昨年」と「現在」の間を行ったり来たりしながら筋が進む、わかりにくいけれども、注意深く見るとなかなかに面白い、計算されつくした作品でした。

びっくりしたと書いたのは、その映画で印象に残っていたのが「マリエンバード」というチェコ西部の町の名前で、そこのロータリークラブ(RC)の封筒だったからです。映画はドイツで撮影されましたが、マリエンバードはチェコに実在する当時も今も人口1万2,000人ほどの町です。チェコ語では封筒のエンブレムのすぐ下にあるマリアンスケ・ラーズネと言います。人口1万人以上の規模の町(市ではない)としてはチェコ最古の町です。40以上の温泉があり20世紀前半には「温泉(スパ)の町」として活気がありました。ちょうどその頃のRCが米国のマディソンRCに送ったのがこの封筒です。中身はわかりませんが左下の方に「Drucksache(印刷物)」というゴム印が押されていますので、週報が入っていたものと思われます。多分マディソンRCのメンバーがその前週にメークアップのため出席したのでしょう。1938年2月19日の消印には、チェコ語とドイツ語で地名が書かれています。

チェコ(当時はチェコスロバキア共和国 / C.S.R.)のロータリークラブは、当時国際ロータリーの第66区を構成していましたが、共産党の進出で1940年にすべて解散となり、50年余の沈黙ののち、1991年5月2日にプラハRCが復活したのは、昨年3月1日のコラムに記した通りです。残念ながらマリエンバードRCの存在は確認できません。人口が1万2,000人余の町ではRCの復活はできないままなのかもしれませんが、昨年(2021年)には「ヨーロッパのグレートスパタウン(の一部)」として、ユネスコの世界遺産に登録されましたので、町の繁栄とともにRCの復活を期待したいと思います。


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