蒸気機関車C57といえば「貴婦人」とも呼ばれるスマートな美しさが売りなのだが、中には使われる線区の事情によって、煙突に集煙装置を付けられたり、ボイラーに重油併燃装置のタンクを乗せられたりして、原形とは趣が異なる姿態になっているものがあった。はたしてこれを「貴婦人」と呼ぶか否かの議論もあったが、足回りは直径1750ミリでC62などと同じ日本最大。つまり足長。細身のボイラーでC62のようにずんぐりとせず、C59ほど男っぽくない。だから「貴婦人」なのか?
とにかく原形とはやや雰囲気が違う「集煙装置」や「重油併燃装置のタンク付き」のC57があちこちにいた。
「集煙装置」は煙突を覆うように装着され、装備した工場によって形態に差があった。もちろん目的は、煙突から排出される煤煙を減らし、特にトンネル内での乗務員の安全維持と、沿線への煙害の抑止を目指したものである。
煙害抑止のためには、俗に「クルクルパー」とわれわれが呼んだ煙突に乗せるお皿のような簡便なものもあったが、ここで取り上げるのは本格的な集煙装置のことである。当然ながらC57だけではなくD51、D50、D52、C58などにも装備された機関車があった。しかし、C57にこれが装備されると、何となくC57ではなくなって別の機関車のように思えた。
各地のC57の中から、集煙装置付きのものを3枚掲載しよう。いずれも走行区間に山岳地帯ほどではないがトンネルや勾配区間のある路線のC57である。本格的な山岳路線の場合は旅客列車にもC57ではなくD51やD50が使われた。また、石炭とともに重油も併燃して走力を高める装置がありその「重油タンク」がボイラーの上に設置された機関車も多く、C57の場合「集煙装置」付の場合はたいてい「重油タンク」も乗っていた。この3枚もそうである。平坦線でスピードが重視される線区では「重油タンク」だけが装備されたC57がいた。彼らについてはいずれ機を得て稿を改めたいと思っている。
①は和歌山線の紀の川橋梁(船戸~岩出)を渡るC57である。ここではC58にも集煙装置がついていた。風光明媚な場所だったので集煙装置はあまり気にならなかった。
②は1971年1月の播但線。新居駅を発車する上り客レの先頭に立つC5711である。これを見たときC57というより別の「山男」のような気がした。このC5711はかつて特急かもめ牽引機として博多~長崎を快走した著名な機関車である。不思議なことに播但線のC57ではこの11号機だけが重装備だった。このHPのトップ画面にC57三重連の写真があるがあれは播但線のスキー臨で3台のC57は皆「貴婦人」のままだ。
③最後はカラーで、山陰本線仁万(にま)~馬路(うまみち)。日本海をバックに出雲路を走る姿。