台湾では、ロータリーの60周年、75周年そして100周年の際に、記念切手が発行されています。ここでご紹介するのはその見本切手です。1949年に台湾(国名表示は中華民国)となってからは、切手の額面表示の数字を2本線で消して「見本」とするようになりました。フィリッピンなどでも同様の手法が取られています。日本でも最近は見本切手の発行はなく、Web上での新切手紹介の際、額面に二本線が引かれていますが、あれが実際の切手に加刷されているとお考え下さい。1960年代までは極少数が作られ政府高官ら関係者に贈られたとのことです。従って1965年の「ロータリー60周年記念切手」の見本は入手困難で、私がロータリーの切手を集め出してから約30年になりますが、国際切手展やオークションでも未だに見たことがありません。
2008年の6月、国際ロータリー(RI)の年次大会が米国のロサンゼルスで開催されました。私がROSに入会して初めて手紙を書いた相手、ROS元会長のデイビッド・ホアン博士が同じカリフォルニア州に住んでおられます。ご高齢で既にリタイアされていた彼にぜひ会いたいと思い連絡しましたが、「同じ州でもここは遠い。列車もバスも君には危険だ。とにかくあとで連絡するから来ないように」と言われホテル名だけお伝えしました。開会式の前々日、友愛の家のROSのブース設営を終えてホテルの部屋に戻ると、彼から電話があり「明日の朝7時半ごろそこへ行くから会おう」とのことでした。
夜中の3時半に自宅を出たという彼は自家用車で奥様とともに7時半丁度に私の部屋に現れました。初対面でしたが、片言の英語も「切手語」で何とか通じ、あっという間に30分が経ち、「昼までに戻って老人ホームでボランティアをすることになっている」と、風のように立ち去っていかれました。写真①のシャッターは長さ5㎝余の付け爪をされた奥様がスゴ技で押してくださいました。
この時、別れ際に彼が私に手渡してくださったのが台湾の「ロータリー60周年記念切手の見本」②でした。「これは多分手に入らないだろうから大事に引き継いでくれ」と言われ、驚きと感激で胸がいっぱいになったのが昨日のことのようです。彼は台湾出身の米国人で、添えられていた彼の説明文によれば、1976年11月29日に台湾郵政の理事長S. P. Wang氏をその事務所に訪ねた際にいただいたものだということです。ロータリーの60周年記念切手の発行は台湾だけで、RI第345地区の記念カード③にその旨が書かれています。
台湾では、1970年になると政策転換で、見本切手はそれぞれ2,000枚作られるようになり、入手も楽になりました。1980年のロータリー75周年の記念切手は田型の状態④で郵趣市場にありました。2005年のロータリー100周年記念切手⑤は単片ですが複数枚入手できました。2,000枚あると一般収集家にも回ってくるようです。
[(注)「台湾」は中華民国政府が実効支配している地域です。切手には「中華民国」と表記されていますが、郵趣では一般に1912年に成立した「中華民国」を指しますので、ここでは「台湾」に表記を統一しました。]