• MY HOBBIES / Kenichi Hamana

ランディ島をご存じですか? それは英国ウエールズとイングランド南西部の間、ブリストル海峡にあり、かつて海賊と密輸業者の拠点で栄えた島といわれています。
この島には1886年から英国の正規の郵便局が存在しましたが、1927年に閉鎖されてしまいました。その後1929年11月1日、この島の個人所有者マーティン・コールズ・ハーマン氏が私立郵便局を設立し、島の永住者や来訪者のための郵便物を運ぶようにしました。その費用を賄うためのローカル輸送切手が販売され、英国本土との間の郵便輸送に使われました。ランディ島と英国本土間の郵便には、英国の切手とランディ島の切手が必要だったのです(①参照)。①はウエールズのNEWPORTからランディ島に宛てた手紙で、到着後下部にランディ島の切手が貼られ、その料金は受取人から徴収されました。ランディ島の切手は島内通貨の単位(パフィン)にもなっている「ツノメドリ」や、産地として有名な「ポニー」が描かれていて、1954年に発行された千年紀シリーズの三角切手が有名です。2019年末現在で198種類の切手が発行されています。(1パフィン=1英国ペニー)

人口は少なく島内にロータリークラブ(RC)はありませんが、ハーマン氏はその千年紀シリーズの内の3種類に「ロータリー50周年を称える」の文字を加刷した切手を1956年1月に5種(加刷の色違いを含む)発行し、その内の3種が私の手元にあります②。もともとの切手は英国の著名な切手印刷会社の一つハリソン社で印刷されましたが、加刷は米国で行われたようです。なぜなら加刷上部の「HORNORING」というスペルが英国なら「HORNOURING」とならねばなりません。ロータリーのエンブレムを加刷することを英国のハリソン社が拒否をしたものと考えられています。ROTARY ON STAMPS(ROS)のDr. David Huang元会長の研究によれば、加刷した枚数は各1シート50枚と言われています。私の手元には加刷エラーと思われる、加刷位置がずれた6パフィンの30枚ブロックがあります③。
ロータリーの加刷はこのシリーズ以外に1951年発行の7パフィン切手に加刷した1種類が知られています。私が私有するものは封筒の裏面に貼られたものです。1955年の国際ロータリー50周年の記念カバー(封筒)に英国の切手が貼られ、BRAUNTON DEBON 1956年1月16日の消印があります④。BRAUNTONは、ランディ島の南に位置する英国本土イングランドDEBON州の村で郵便局があります。裏面にはロータリーのエンブレムが赤で加刷された切手が貼られ、RANDY 1956年1月15日の消印が押されています⑤。このカバーはランディ島の私設郵便局で受け付けられ、翌日英国の正規のBRAUNTON郵便局で引き受けられ米国に送られたたものです。

英国ではスコットランドの多くの島々や地域、そしてハンプシャーなどにも「ローカルキャリア」の切手が存在し、ロータリーのエンブレムが印刷されたものも多数ありますが、それらの大半は郵便に使用されるものではなく、切手収集家相手に収集用として作られたものだろうと思われます。
④⑤のカバーのあて先は米国NYの郵趣業者です。果たしてこれが一般的な切手といえるものかどうか真贋諸説ありますが、ランディ島の切手は私設とはいえ実際に郵便業務が行われていたことから、切手として認めてよいだろうと私は思います。
(このコラムを書くにあたってはROSおよびランディ島のランディコレクターズクラブの資料を参考にしました)


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