縁とは不思議なものです。
今から15年ほど前のこと、ある世界的なインターネットオークションに、1951年6月に広島ロータリークラブ(RC)がアメリカのピッツバーグRCのロータリアンDr. Paul McBride Gillsに宛てた手紙の封筒が中身の文書とともに出品されました。
1951年当時発行されたばかりの文化人シリーズの切手が3種貼られている美しいカバー(封筒)で、郵趣的にも素晴らしいものに思えました。それなりの金額で入札したのですが上には上があり、私は2番値で落札できませんでした。一体誰が落札したのかと思っていましたが、その6年後、2009年の国際ロータリー(RI)年次大会(英国・バーミンガム)で判明しました。そこでは、2000年のロンドン国際切手展の会場でお会いして以来の友人(というよりも大先輩)で、ROTARY ON STAMPS(ROS)の元会長であるMichael Gosney氏が、友愛の家のROSのブースの近くに12フレーム(192ページ)に及ぶロータリー関連切手等の個人コレクションを展示しておられ、何とその中にこの封筒と手紙があったのです。
これは1951年5月のRI年次大会(米国・アトランティックシティー)で語られたRI会長のスピーチの意味を伝えてくれたことに対する礼状で、それを翻訳して6月12日のクラブ例会で皆に紹介したと記載されています。差出人の藤井徳兵衛幹事(のち1954年に福山RC創立特別代表)は、RI会長の「新会員の課題」という演説は単に初心者だけでなく、長い間眠っている会員にも重要で必要なことだと述べておられます。短い手紙ですが、ロータリーの原則にも触れながら中身の濃いやり取りがあったものと推測します。M.Gosney氏はこの手紙に「被爆地・広島のRCが、それからわずか数年のうちに旧敵国アメリカのロータリアンとこのような交流していたことに敬意を表する」とのコメントをつけておられました。お互いにオークションでのニックネームをまだ知らない頃でしたが、相手が私だとわかっていても「譲らなかったよ」と言われました。それほど興味ある手紙です。
その時の展示の最初のフレームには、以前のコラムで紹介した私が所蔵する1910年の第1回大会のハガキのコピー(事前に彼の依頼で送ったもの)も掲出されていました。
彼はRIの3年に一度の規定審議会に地区代表議員として4回出席した人望あるパストガバナーです。2012年バンコク大会の前、BSE(牛海綿状脳症)を発症し急逝されました。それからしばらくして奥様(Johさん)から大きな封筒が届き、何とその中にこの封筒と手紙が入っていたのです。奥様からのメールによると、彼は生前「これはKenichiが喜ぶから」と言って、いずれ私に送るようにと頼まれていたそうです。奥様もロータリーではインナーホイールのイギリスの代表を務める方でした。他にも、あの時展示されていた日本関係のものがいくつか入っていましたが、それらについてはまた別の機会に。